「ちょっと書くもの貸してください。」
患者への説明のため絵を書こうとしたところ、手持ちにボールペンがない事に男は気づいた。
1ヶ月前に家から10本ほども持ってきたはずなのに一体どこに消えていくのかと一瞬考えたが、まあそこかしこに忘れているのだろう。
こういった職場ではボールペンは天下の回り物と呼ばれる。大体は出入りの業者の社名が書いてあるようなボールペンなので、それぞれの見分けはつかない。失くしたくないのならばちゃんと名前を書いておかねばならぬ。
ボールペンを借り、説明を行う。患者へ挨拶をしてパソコンに向かう。カルテに書き込む。「大きく変わりなし」
男は小さく伸びをした。
朝からの外来。この外来というのはなかなか骨の折れるものなのだ。
身体的にはせいぜい肩がこる程度であるが、注意を全方向に向けながら会話するのは、さながらハンターハンターの「円」の如く気力を消耗するものなのである。ちょっとした手術の方が余程気は楽なものだ。
その日の最後のひとりを診終わった後に疲れから小さく伸びをしたとして誰が責められようか。
腹も減ってきた。そろそろ2時にかかろうというところであり、当然といえば当然である。
(そういえば塩辛が残っていたな。あれをサラダの上からドレッシングがわりにかけてみるか。)
ボンヤリとそんなことを考え席を立つ。
ボールペンのことを忘れていた。いくら天下の回り物とはいえ、気づいたのならば返さねば。
それにしても、いつも使っているボールペンとは少し手触りが違ったな。どこの会社のものだろうか。
手に持ったペンをくるりと返してそちらを見やる。
そこには見慣れたあのマークと文字が並んでいた。
「晴れる屋」
注: この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。多分。
患者への説明のため絵を書こうとしたところ、手持ちにボールペンがない事に男は気づいた。
1ヶ月前に家から10本ほども持ってきたはずなのに一体どこに消えていくのかと一瞬考えたが、まあそこかしこに忘れているのだろう。
こういった職場ではボールペンは天下の回り物と呼ばれる。大体は出入りの業者の社名が書いてあるようなボールペンなので、それぞれの見分けはつかない。失くしたくないのならばちゃんと名前を書いておかねばならぬ。
ボールペンを借り、説明を行う。患者へ挨拶をしてパソコンに向かう。カルテに書き込む。「大きく変わりなし」
男は小さく伸びをした。
朝からの外来。この外来というのはなかなか骨の折れるものなのだ。
身体的にはせいぜい肩がこる程度であるが、注意を全方向に向けながら会話するのは、さながらハンターハンターの「円」の如く気力を消耗するものなのである。ちょっとした手術の方が余程気は楽なものだ。
その日の最後のひとりを診終わった後に疲れから小さく伸びをしたとして誰が責められようか。
腹も減ってきた。そろそろ2時にかかろうというところであり、当然といえば当然である。
(そういえば塩辛が残っていたな。あれをサラダの上からドレッシングがわりにかけてみるか。)
ボンヤリとそんなことを考え席を立つ。
ボールペンのことを忘れていた。いくら天下の回り物とはいえ、気づいたのならば返さねば。
それにしても、いつも使っているボールペンとは少し手触りが違ったな。どこの会社のものだろうか。
手に持ったペンをくるりと返してそちらを見やる。
そこには見慣れたあのマークと文字が並んでいた。
「晴れる屋」
注: この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。多分。
コメント
ダイスは増える人と減る人がいるのはご愛嬌。
人と同じように皆旅人なのでしょうね(適当)
>段氏
今回は純文学に挑戦してみました
>虚氏
主演ムンナでおなしゃす
>知己氏
実在の団体とは関係ないので…(震え)
そう言って頂けると結構うれC